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化石のはなし

motoron.exblog.jp

北海道で化石採取をしている motoron と Ryoのブログです。

三笠・桂沢・オーバー・ザ・ユーバリの沢

2011年12月上旬

この年の冬は早くやって来ました。積もった雪は、そのまま根雪となりました。
その日も朝から湿った雪が降り続いていました。

挽いたばかりの珈琲のふくいくとした香りが溢れるカップを片手に
Ryoは窓に顔がくっつきそうな程近づいて、しばらくの間、雪に覆われてゆく庭を見ていました。
「....ねぇ〜。化石採りにいこ〜よ」
「今日、ですか?」
「望来でも当別でもドコでもイイからさ〜」
「望来は昨日行ったばかりだから、あまり変わってないと思いますし、こう降られると、ノジュールを探せないでしょう。当別は完全に埋まったと思います」
「ん〜....。じゃ、三笠にしよっか」
「(笑)恒例の、ですね?」
「あそこなら、なんとかなるでしょ?」
「まだ埋もれてはいないでしょうけど、河原はキビシイですよ」
「い〜よい〜よ、なんかあるって。それに、これ以上積もったら行けなくなるよ。行こっ!!」
年末、三笠・夕張の他の沢は細くて埋もれがちなので、
「オーバー・ザ・ユーバリの沢」の下流で締める事になっています。

さっそく用意をして出発しました。久しぶりの冬の山道運転、少し緊張します。
湿った大粒の雪がフロントガラスに当たっては、じわりと融けて流れます。
タイヤは雪を噛み、アイスバーンとは少し違った滑り方をします。
目的地まで坂道とカーブが続くので慎重に運転します。
幾春別の街を過ぎると雪は徐々に増えはじめました。
真っ白な雪に囲まれた桂沢湖は、いつもより暗く澱み、もう深い眠りについた様でした。

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途中、未除雪の道もありましたが、幸い夕張へと抜ける道路は除雪済みでした。
ようやく到着した「オーバー・ザ・ユーバリの沢」の林道は、
相変わらずゲートが閉じていましたが、新しい轍がゲートの向うへと続いていたので、
心配になり駐車場所を変えました。

Ryoは新調したばかりの赤いオーバーを羽織ると
「行くぞっ!!」と意気揚々、先に雪を漕いで行ってしまいました。
「Ryoさ〜ん!! 雪の下はどうなっているかわからないので、踏み抜いたりしない様、気をつけてくださいね〜!!」
「は〜い」
と、こちらを振り向きもせずRyoは橋の手前から川へと下って行きました。
遠ざかる鐘の音が、山と橋桁のコンクリートに反射し幾重にも聞こえて来ます。

ワタクシもしばらくしてから追いかけます。
Ryoは川縁の笹の根元あたりをゴソゴソ掘っていました。
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「何かありましたか?」
「ん〜、さっき、ちっさいコザコザ系見つけたけどイマイチだった。それに、今日ちょっと水量あるんだよね」
「まだ、地面が冷えきっていないので、若干、雪融け水が出るんでしょうね」
「あ、また雪が降り出した...」
「気持ちが良いですね。冬は汗をかかないので大好きです」
「虫もいないしね。これで、いつもと同じ位ノジュールが見えてたら最高なんだけど...」
Ryoは木に下がった"つらら"を折ったり、川縁に出来た薄氷を割ったり、
フリーズドライになったキノコの写真を撮ったり、それなりに散策を楽しんでいる様です。
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水中にアンモナイトの模様が見えました。冷たい水に手を差し入れ引き上げました。
「これ、アナゴーさんでしょうかね〜?」
「スレてんね〜」
「中がどうなっているか分かりませんが、一応、持って帰りますか...」
「そうだよ、あんまりないんだからさ。何でも持って帰らないと。今日は、もっとイノセラさんも出る予定だったんだけどな〜...。ここの金ピカでカッコイイんだよね」
「化石自体、前回より少ないですね」
コザコザ系や状態の悪いモロモロ系しか出て来ません。
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辺りは見る間に雪が積もってゆくのに、黒い川の流れに降りた雪は
端から存在しなかったかの様に消えてしまいます。
そんな当たり前の現象も、じっと見ているとなんだか不思議な心持ちになります。

15cm程のノジュールを割ると、真ん中から、見た事のないモノが出て来ました。
ウニの様にも見えましたが、断面の形と付随すると思われる小さなパーツと殻の薄さは
ウニっぽくありません。甲殻類なのかもしれませんが、どうも判然としません。
なんだか分かりませんが、分からないということは...「良い化石」です。
これが、この日、一番の収穫でした。(いずれクリーニングし、全貌が現れたらアップします)

微かに低いエンジン音が聞こえた気がし、林道を見上げていると、
カーブの向うからライトを点けたオフロード車がソロソロと来るのが見えました。
当然、林道は除雪はされておらず、バンパーの前には押しのけた雪の小山が出来、
腹を擦り、深い雪に翻弄されています。
「やっぱり、入っている人がいたんですね。車移動しておいて良かったです(+∀+;)」
「あ〜ゆ〜車がイイよね〜」
「それにしても、よくあの状況で走れるもんですね...」

その後、小さめのゴードリセラスと、ややキレイな中サイズのイノセラムスを採取したのみで、
大した収穫も無い上、いつも終了ポイントにしている古い橋まで行く事も出来ず
タイムアップになりました。足場が悪く斜面を上がれないので、
林道を使わず川を引き返す事にしました。
途中、熊の足跡や痕跡を探してみましたが、ありませんでした。とうに冬ごもりしたのでしょう。
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思った通り成果はイマイチ、二人合わせて10Kg程度でしたが、雪が降る中での採集は気分が良く、
帰りの車中は二人とも御機嫌で、珈琲を飲んだり、お菓子を食べたり...。
唐松を抜け、幌内に出る坂道を下っている途中、道路脇にシカが一頭いました。
「あ、Ryoさんの方に、シカがいますよ(+∀+)」
「ホントだ〜っ!!ずいぶんおっきいね〜」
次の瞬間....シカは車の前に躍り出ました!!
「ドガッ!!!!!ドがドガドドドドガがドガ!!!!!」
重い衝撃と激しい音!!
「ひーーーーっ(+∀+;)このドバカチン!!!!」
今、ワタクシたちが走る坂道の突き当たりは信号の無いT字路です。
絶対に進入する訳にはいきません。
後続は桂沢湖から、ずっとワタクシの車をあおり続けてきた大型ダンプ、
今も、かなり接近しています。
さらに運が悪い事に対向車が来てしまいました。
圧雪の路面は滑り、ワタクシが操作を誤れば、どれほどの多重事故になるか分かりません。
いずれブレーキは踏み込めません。対向車へ数度パッシングし、タイヤがロックしない様、
そして、後ろへ異常を伝える為、細かくブレーキを踏みつつ
猛烈なスピードで「後続のトラック」→「シカ」→「対向車」→「T字路」と目をやり続けます。
ボンネット越しに絶えずシカの頭や足がヒョコヒョコ現れ、ガタゴト激しい音がしています。
これ以上状況が改善しなければ、対向車とすれ違った後、路肩へ寄せて止まるしかありません。
しかし、助手席にはRyoが乗っているのですから、出来るだけ被害は最小限に抑えたいと考え
タイミングを探っていました。
T字路まであとわずか...!!あわや衝突か!!!というところで、ようやくシカが脱出成功、
足を痛めた様でしたが、跳ねて脇の林へと消え去りました。

「ふ〜う...(+∀+;;)....どーにか....止まれた....。」
「危なかったね〜....」
「まさか、あのタイミングで飛び込むとは思わなかったです...あの馬鹿鹿めが....(+∀+;)車道で鹿をよく見かけるので、いつか、こういう時が来るとは思っていましたが...。今日は案外、冷静に対処出来て良かったです...」
「対向車の人もビックリしただろうね(笑)」
「脱出したシカが今度はあっち側に飛び出さなくて良かったです、対向車まで変な運転になって事故ったら一緒ですものね...」
「ね〜...」

「飛び込んで来た時、どう思いました?」
「わぁ〜...シカ轢いちゃってるよ〜、って思ったよ」
「それだけ...(+∀+;)?」
「うん」
「Ryoさんって、どんな時も"キャー"みたいな声だしませんよね。聞いた事ないです」
「ん〜、言わないね」
「大っ嫌いなモコモコ(毛虫)を見たときも無言ですものね」
「やめろ!! モコモコの話はするなっ....!!ところで、あのシカ、大丈夫だったかな?」
「足をひきずっていたので、冬を越せるかは分かりませんね...」
「もし、轢いて死んじゃってたら除けるの大変だったね」
「まぁ...二人ではムリかな」
「道路でバラすワケにいかないしね(笑)」
「雪道で...。そりゃ、とんだスプラッター現場ですね...(+∀+;)」
「ね〜、鹿肉って美味しいんでしょ?」
「えぇ...臭みが云々という話があるのですが、ワタクシがごちそうになったのは美味しかったです」
「馬肉みたい?」
「それは、馬の方が美味しいかもしれませんが、ちょっと似てたかも。牛肉よりクセが無くて凄く気に入った記憶があります。きっと下処理がちゃんとしていれば美味しいんでしょうね」
「どっかに落ちてないかな?」
「ん〜ん〜ん〜....(+∀+;)」

シカを轢きそうになった後に、食べる方向へ話がいくのは、なんともワタクシ達らしいですが...。
何はともあれ、大事故にもならず、一応シカは助かり、車もほぼ無傷で済み本当に良かったです。

鈍色の冬の宵闇を埋め尽くさんばかりに大粒の雪が降ります。
風が吹く度、辺り一面がグニャリと歪む様な錯覚をおぼえます。
「今年も終わりですね...」
「大丈夫!! 望来があるよ」
「もちろん...望来は好きですけど、やっぱり半年間というのは...」

そして、ワタクシたちは一週間後、初めて浦河へ行ったのでした。
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by motoronron | 2012-09-24 21:31 | 三笠 | Comments(12)
Commented by アルビアン at 2012-09-24 22:33 x
こんばんは、素晴らしい内容ですよ、なんか、連続ドラマが出来そうです。羆の危機や鹿の恐怖、伝わります。もとろんさんのブログは、本ですね、表現が素晴らしいです。歌のなかにでてくる歌詞みたいな、感じがしました、お二人は仲良く、素敵な時間を過ごされてますね、化石を通して、二人の絆が深まる感じがしました(^○^)
Commented by apogon2 at 2012-09-24 22:54 x
シカと衝突ですか、大変でしたね。でもお二人がご無事で安心しました。私も遭遇は何度もありますが、幸いにもまだ衝突までは至っておりません^^;。
12月に「オーバー・ザ・ユーバリの沢w」ですか・・寒くなかったですか。入り口の橋から古い橋までかなり距離がありますよね。夏でもゆっくり歩くと往復4時間以上はかかると思います。途中には倒木などがあったと記憶していますので大変だっただろうと思います。
ところでなんだか分からない「良い化石」、とても気になります^^。
Commented by fossil1129 at 2012-09-24 23:38
12月の「オーバー・ザ・ユーバリ」て、
地元の方は、すごい時期に行っておられますね。
そんな中でも、化石を採ってこられるのには参りました。

積雪、後続車、対向車、エゾシカ、そしてT字路。
八方ふさがりですやん。
運転テクに拍手です。
Commented by もとろん at 2012-09-25 22:04 x
アルビアンさん、おこんばんさまです〜(+∀+)!!
超お褒めに与りましてコーエーです〜。。。(+∀+#;)心配になる事も多々ありますが、それでも、二人で化石採集に出かけるのは本当に楽しいです。出来る限り続けていけたらと思っています...。アルビアンさんのところは...これからがますます楽しみですね(+∀+)!!先生がスペシャル過ぎますもの〜(笑)
Commented by もとろん at 2012-09-25 22:07 x
apogon2さん、まいどさまですに〜(+∀+)!!!
apogon2さんのブログ...今回も凄かったですね〜(汗)も〜、羨ましい〜!!とスゴ〜イ!!!しか言えなくなります〜。冬の採集は全然寒くないですよ(+∀+)。インナーつきのもこもこ長靴を買ってからは温かいほどです〜。ワタクシよりもずっと寒がりのRyoさんも「へーき」との事です。さすがはベテラン様、オーバー・ザ・ユーバリを歩いた際の正確な時間を御存知ですね(+∀+;)。
Commented by もとろん at 2012-09-25 22:11 x
fossil1129さん、おこんちんばんは〜(+∀+)!!!
冬の方が気持ちはよいです〜。これでノジュールがバッチリ見えているのなら、冬専門になってもイイくらいです〜(笑)。もっと真冬に見に行ったこともあるです。もちろん、ほとんど何も無くなっていましたが〜(笑)シカ事故にならなくて本当に良かったです。目視確認しなければならない所が多過ぎて目が回りそうでした〜(+∀+;)。
Commented by はにわ at 2012-09-25 22:35 x
北の人はすごいですね。こんな雪の中でも採集に行くなんてこちらでは絶対行きません。怖いので
林道事故想像するだけで嫌ですね。とにかく何事もなくブログで記事になってよかったです。
鹿肉どうなんでしょう。美味しいでしょうか?自分で轢いた鹿肉って・・・・どうなんだろう
Commented by もとろん at 2012-09-25 23:05 x
はにわさん、どもばんは〜(+∀+)!!
雪の日採取イイですよ(+∀+)。過信はしておりませんが、スタッドレスタイヤ思ったより効く感じでした〜。基本的に安全運転を旨としておりますが、雪道は何が起こるか分かりませんので、初心者のワタクシ、皆様にご迷惑かからぬ様、気をつけますです。
もう二度とシカと衝突はしたくないですが、そんな供養もあるかな〜、なんて(+∀+)。
Commented by ZX9-R at 2012-09-26 06:01 x
この時期に巡検ですか! 思いっきり雪が積もってますよ~!! しかもRyoさんからのご希望とは・・・。パワフル夫婦ですね。で、採集できるもんなんですね。お2人はOFFシーズンが無いのでは?
鹿さんとの衝突ですが、大きな事故にならずに何よりでした。ちなみに私はバイクと車で衝突しています。バイクは廃車に。私もあやうく廃者になりかけました(笑)
お互いに気をつけましょうね。
Commented by もとろん at 2012-09-26 09:46 x
ZX9-Rさん、おはようごじゃりま〜す(+∀+)!!
え〜?あれ?皆様、冬には行かれませんのですか??ワタクシたち的には、暑い中、ブッシュを濃いだり、虫にたかられたり、汗をかいたりせず、とても快適で気楽感じの採集なのですが...。特に上に書きました「もこ長」をゲッチョしてからは悩みは皆無です〜。はい〜、個人的な事情により、ワタクシたちは年中無休で採取しております〜(+∀+)故に全くクリーニグは追いつきません〜(汗)車と衝突、バイクとZX9-Rさんが歯医者....ブルブルガク顎...(+∀+;)シカ事故の何千倍も恐ろ歯科なお話しです〜。山で死ぬのはまだしも...事故はやっぱりイヤですね。
Commented by もーりん at 2012-09-27 16:06 x
こんばんは
ドキドキする内容もさることながら、もとろんさんの文章、すばらしいですね。おわりの6行がとくに素敵でした。なにか、書く仕事もされているのでしょうか?築地書館の編集者の目にとまったら、化石エッセイの出版の話があるかもしれません。「夫唱婦随の鉱物採集」の化石判の本です。自分は本をあまり読まなかったのが致命的で
味のある文が書けません(^_^;)
Commented by もとろん at 2012-09-28 15:20 x
もーりんさん、どもばんちは〜(+∀+)!!!
だらだら文章、少しでも楽しく読んで頂ければと四苦八苦しております。これで皆様の様に素晴らしい採取品がお見せ出来れば良いのですが...こればかりは...(+∀+;)「夫唱婦随の鉱物採集」ワタクシは最初の章しか読んでいないのですが、イモートさんにプレゼントしました。あんな本は楽しくて良いですよね〜。以前も書いた事がありますが「化石風土記」みたいのイイな〜と思い書きはじめました。