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化石のはなし

motoron.exblog.jp

北海道で化石採取をしている motoron と Ryoのブログです。

沼田・道行き三人・タカハシホタテ

2010年 7月上旬

久しぶりに茨城から帰省したイモートさんと三人の夏休み、
バーベキューや化石採集の日々を送っていました。
あまり採集慣れしていないイモートさんにも採取しやすく、
且つ満足感を得られる場所を選ぶのはちょっと大変です。

深夜、Ryoがキッチンで当別川のノジュールや化石をゴシゴシ洗っている間、
ワタクシは二階のパソコンの前で悩んでいました。
Ryoにも楽しんで欲しいと思うと、どうしても新地開拓になります。
しかし、見知らぬ産地では確実に採取出来る保証が少なくなります...。

ダン!ダン!ダンッ!と階段の踏板を割る勢いでRyoが二階に上がって来ました。
「フゥ~、全部洗ったよ~。明日、ドコ行くか決まった!?」
「う~ん、正直悩んでいます...」
「また三笠でイイんじゃない?」
「三笠も行くつもりですが、連日ではハード過ぎるので、間に少し軽めのを入れたいんです」
「軽めね~...」
「タカハシホタテなんて、どうでしょう?」
「大っきいホタテでしょ?」
「そうです。あれなら採り易いでしょうし、ワタクシたちも初めてです」
「あーゆーの好きよ。ドコで採れるの?」
「沼田あたりが有名らしいです」
「沼田ってドコ?」
「滝川のもう少し北の方です。幌新太刀別川(ほろにたちべつがわ)という川に沢山あるそうです」
「地図とか調べた?」
「いや、コレからです」
「...じゃ、アタシ、ちょっとコンコン(クリーニング)してこよっかな~」
「えっ(+∀+;)!?...お風呂の後なので、あまり汚れない事してくださいよ...」
「ん~...仕方ないな...。Fさんに頼まれてる服でも作るか...」
しばらくして"ガチャコガチャコ"とミシンを踏む音が聞こえて来ました。

化石本には、2カ所ポイントが掲載されていました。やはり、幌新太刀別川が有力候補です。
もうひとつのポイントは畑の中を通らなければならず、出来れば、あまり進入したくありません。
沼田で産出する化石は、タカハシホタテの他にも海牛やクジラやデスモスチルス、
貝ではキララガイやツリテラ等々、ワタクシたちに馴染み深い化石も多産する様です。
写真を見る限り採取も楽そうです。引き続き、調べていて驚愕の事実。
幌新太刀別川での化石採取は禁止とのこと...。
慌てて、地質図で「幌加尾白利加層」が露出していそうな場所を探しましたが、
どこも入り難そうな場所が多く、ラクチン採取になりません。
しかも、地質図は60年も前の調査で市街付近は殆ど白地図で役に立ちません。
あまり気が進みませんが、もうひとつのポイントに行くことにしました。
どう進入するべきか、あれこれ悩みながら地図をみていました。
「あっ!!(+∀+)!!!みつけたっ!!!」
さすがはGoogleMapです。ドコで採取出来るのか、ドコが良さそうか一目瞭然です。

「Ryoさん!! 決まりました!!明日、沼田に行きますよ(+∀+)!」
「よし、ホタテ採るぞっ!!!」
イモートさんにも、行先決定のメールを送信。
「おぉ~(θ∀θ)!!!タカハシホタテ!!楽しみす!!」と、すぐに返信がありました。

翌朝は、雨上がりの曇り空、でも気温は高く暑いくらいでした。
早朝に家を出るはずが、相変わらずバタバタして、結局10時半に出発...。
国道275号線を快調に北上します...が、ワタクシはこちらの方へあまり来た事がないため、
ドキドキしながらの運転となりました。
浦臼町の車線が広過ぎてドコを走っていいのか戸惑うロード。
新十津川町を抜ける際の二段階カクカクロード。
沼田町でも国道カクカクに迷い街中をぐるりと一周してしまいました。方向感覚オンチは大変です。
それでも、道中は行ってみたいと思っていた産地名が多く出て来て、話は盛り上がりました。

行きつ戻りつ、どうにか目的地付近に辿り着きました。
作業中の農道を通るのはためらわれ、ましてや駐車は不可能に思えました。
再びウロウロしながら、やっと車一台駐車出来るスペースを見つけ、そこから川へ降りて行く事に。
昨晩降った雨をたっぷり含んだ背の高い草をかき分け進みます。
時折、隠れていた排水溝に落ちそうになります。
蚊が多く、蚊取り線香をぶら下げていても、防虫ネットをしないワタクシは、
あっと言う間に顔中を刺されてしまいました。
川に降りられそうな所を探して薮の中をさまよい、
ようやく川岸に辿り着いた時には、雨露ですっかり濡れ、
薮漕ぎで汗だくになっていました。
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目の前の川は、昨晩、地図を見て想像していた通りの風景でした。
雨の後の割に増水はしていません。
歩き出してすぐ、無数の二枚貝の断面がありました。
しばらくして、タカハシホタテと思われる二枚貝が覗いているのを見つけました。
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すぐにRyoが掘り出しますが、保存はイマイチでした。
「ん~...保存悪いな~、簡単に割れちゃったよ...。こんなんで大丈夫かな~?」
「大丈夫ですよ。ワタクシの予想では、もっと先が良いと思うんです。きっと沢山ありますよ。ドンドン行きましょう(+∀+)!!」
と、口では威勢の良い事を言ったワタクシですが、
汗だくで、おまけに蚊に刺されまくって、早くもテンションは下がり気味。
細い川岸を三人は一列になって進みます。濡れた泥岩は滑り易く、
絶えず誰かが「ズルッ」とコケそうになりながら進みます。
少しずつ川岸が広くなり、あちらこちらに白い化石が見えてきました。
数は相当なもので、川岸にも川底にも無数のタカハシホタテが埋まっています。
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三人は、それぞれ思い思いの場所で採取を開始しました。
Ryoは早速タガネを豪快に打ち込み始めました。
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ワタクシも泥岩の硬さや化石の強度を確かめながら掘り進めます。
幾つか採取して、殻本体はかなり分厚く丈夫だけれど、耳の部分は壊れやすいのが分かりました。
そこで、まず耳の位置と状態を確認してから掘る事にしました。
この方法でコツを掴んだ後はタガネを使わずハンマーのチゼル部分だけで、
少々乱暴に掘っても大丈夫でした。

初めて手にしたタカハシホタテは想像よりもはるかに大きく厚く重量感があります。
濡れた革手袋をはずし、素手に持ってみました。
ひんやりとした感触はハンマーのグリップを強く握り続け火照った掌に心地良く、
手首から肘へと泥水が流れます。指で殻頂から放射肋に沿って泥を拭いました。
指先から伝わってくる輪肋の細かな一本一本は数百万年前、
この生物が確かに生きて成長し命を終えた証で、それに触れているのだと思いました。
普段採取している二枚貝とは違う圧倒的な大きさと存在感が、そんな事を強く感じさせました。

イモートさんが遠くからやって来ました。
「おんちゃ~ん...(θ∀θ;)なんか、割れちゃうんだけど...」
「タガネの入れ方がわるいのかな?ホタテから遠いところ掘ってる?」
「うん」
「じゃあ、出来るだけ叩いた時の衝撃や圧がホタテにいかないように気をつけてみて。耳が壊れやすいみたいだから、その辺りキレイに出してからね」
「はい~(θ∀θ)。。。やってみるす」

今度はイモートさんも慎重です。半ば水没しているホタテを見つけ、
静かにタガネでホタテの回りを掘りだしました。良く見える様にするため、
近くの水たまりから水を引き、川へ排水する溝を掘ったりして、まるで子供の泥遊びです。
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すっかり慣れたワタクシはチゼルハンマーでボコボコと芋掘りの様に採取していきます。
合弁も多くあります。事前の情報よりも大きいサイズが多いと感じました。
小さくても10cm以上、大きなものでは20cm近くあります。
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イモートさんが小さめサイズの左殻を持って来ました。
「おんちゃ~ん(θ∀θ)。なんか、この平らな方の殻、ブツブツのばっかりなんだけど...?」
「平らな方が上で、丸っこい方を海底側にしてたらしいんだよね。だから平らな方にはフジツボなんかの痕も多いでしょ?」
「そか...(θ∀θ)じゃ、コッチ側は汚くても仕方ないんだ」
「フジツボも欲しいから、イイのあったら教えてね」
「あ~い...(θ∀θ)」

Ryoさんもやって来ました。
「ど~ぉ?採れた~?」
「はい、結構とりましたよ。あそこに集めてあります」
「うわ~、スゴイ採ったね」
「慣れて来たのでペースが早いです」
「アタシ全然だよ~、どっか割れちゃうんだよね。ありすぎて、どれ採っていいのか迷っちゃうし...」
「たしかに沢山ありますね。でもワタクシ達が一番のりみたいですよね?」
「うん。ありすぎるから、みんな飽きてるんじゃない?」
「幌新の方では有料の採取会みたいですが、毎回盛況の様でしたよ」
「う~ん、ここは穴場って感じでもないけどね。それにしても、ここ随分、浅い川だよね」
「川幅がある割に浅いですよね。雨の後でこうですもの。化石は沢山露出していますから増水のたびに流れてしまうでしょうね」
「もったいないな~。下流の方に化石いっぱい溜まってるんじゃない?」
「(笑)どうでしょう?大体、途中で壊れてしまうんじゃないですか。じゃないと石狩川の河口には大量の化石が溜まってますよ」
「そっか(笑)」
「ワタクシ、もう少し先がどうなっているか見て来ますから、この辺で採っていて下さい」
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100m程は同じ様な状態が続き、やがて岸が途切れ、深みがありました。
淀んだ生温い水に浸かりズボンを股のあたりまで濡らして、どうにか通過しましたが
ドロドロになってしまいました。数m先の一段高くなった草の中から飛沫をあげ
勢い良く水が流れ出ていました。用水路からの様です。
これ幸いと手を洗います。とても冷たくて気持ちが良いです。
ズボンの汚れも洗い落としていると、ワタクシの手に何かが当たりました。
「うっ...これは、たしかミカンの皮!!(byビッグ錠)...(+∀+;)」
しばらくして、玉ねぎの皮...ジャガイモの皮...コンビニ弁当の箱...コーヒー缶と次々流れて来ます。
「ん~...コレは...うどんか...。(+∀+;)流しうどん...。用水に生ゴミ流すのやめちくれ...」

さらに下流へ行くと、炭化した木や軽石が混ざった層がありました。
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それを過ぎると、再びタカハシホタテが出始めます。また、風化して種は不明ですが
二枚貝やツリテラも多くありました。
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これより先は、岸が無くなってしまったので戻りました。
わずか500m程の距離に大量のタカハシホタテが顔を出しているのは、実に壮観でした。

「どうですか〜?採れましたか(+∀+)?」
「採った〜!!」二人とも満足そうです。
「ね、このホタテ絶対美味しいよね!!」
「普通のホタテであのサイズですから、きっとスゴイんでしょうね...(笑)あまり動かなかったので美味しくないかもという話ですが、激しく動かない貝でも案外貝柱はしっかりしているものですからね〜」
「食べたかったな~...(θ∀θ)」

「さ〜、帰ろっか?」
「んっ!? うわ~...重いっ(+∀+;)!! 重すぎる〜!!持ち手が指に食い込んで痛いです」
「欲張ってイッパイ採るから~...。ホタテは重量級だし、中身は全部泥だからね」
ワタクシは、パンパンのリュックを背負い、両手にダイソーの特大ビニール袋を持ち、
休みながら、フラフラと二人の後をついて行きます。
岸へ上がるのに一苦労、その後も、側溝に落っこちて、枝で顔を打って...ボロボロで車へ戻りました。

まだまだ明るい夕方です。
帰り道、新十津川の徳富川(とっぷがわ)に寄って、暗くなるまで採取してから帰りました。

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殻高17cm
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by motoronron | 2013-02-11 18:27 | もろもろ産地 | Comments(12)
Commented by apogon2 at 2013-02-11 18:40 x
今回の記事も読み応えがありました^^あたかも一緒に最終に行ったような錯覚さえ覚えてしまいましたよー^^。
それにしても凄い産地ですね。
まるで潮干狩りのようですね。採取されたホタテも耳がしっかり付いていてまるで生きているような状態ですね。
こんなに分厚いホタテ、貝柱はさぞかし大きかったのだと思います(*^_^*)。
Commented by アルビアン at 2013-02-11 18:58 x
こんばんは~もとろんさん(^○^) いや~コラボできました、ありがとうございます。わたしの記事が恥ずかしいです。あまりの素晴らしい内容に、座骨神経もピリピリであります。素晴らしい地域をアタックしてますね、ツリテラ等が見られる地層中からは、鯨の化石みたいのが、案外採集できます。私は、ツルハシでドバーとホジリまして、採集したら埋め戻す繰り返し戦法、畳替えしならぬ、地層替えしでした、三人なら、楽しくとても良い思い出になりましたね、今回の記事Niceです。楽しかった~ありがとうございました(^.^)
Commented by motoronron at 2013-02-11 19:23
apogon2さん、おこばちは〜(+∀+)!!
いつも長くて申し訳ございません〜。おつかれさまでした〜。本当に見渡す限りタカハシホタテなのです。川底も全部です。ここは合弁が多いのがウレシかったです〜。化石といえど、すごくナマナマで現生の貝の様にみえます。タカハシホタテの潮干狩り....とんだ肉体労働です〜(+∀+;)。
Commented by motoronron at 2013-02-11 19:31
アルビアンさん、どもばんちは〜(+∀+)!!
ラストの拡大写真が間に合いましたので、コラボさせて頂きました〜。ワタクシのはあくまで長々読み物で〜(+∀+;)皆様がほっし〜化石の情報は最初からアルビアンさんのブログにおまかせです〜。fossil1129さんのアルビセラス・ザコツシンケイは笑っちゃいましたね〜(笑)ワタクシも思わず口にしたコーヒーを吹きそうになりました。ツリテラのところからクジラ骨(+∀+;)!?次回行ったら、きっと掘ってみますね。いつも貴重な情報をありがとうございます〜。またコラボさせてくださいね。
Commented by ZX9-R at 2013-02-11 20:09 x
タカハシホタテ巡検紀、じ~っくり拝見させていただきました。接客巡検ながら、新しい産地の開拓、そして大成果。巡検写真も、最後の標本写真も素晴らしいですね。タカハシホタテの掘り方も大変参考になりますね。とにかく素晴らしい記事でした。
それと真冬巡検に行かれたのですね~。とてもマネできません。
お二人の仲良し~な雰囲気も伝わってきましたよ~!
Commented by もとろん at 2013-02-11 21:39 x
ZX9-Rさん、どもどもど〜ん(+∀+)!!!
接客巡検(笑)いつも、二人には確実に採れるところへ連れて行って上げたいのですが、運も大事ですから、なかなか難しいな〜と思います。笑っちゃうくらいイッパイあるので、是非ZX9-Rさんも何かの機会に御家族で採取なさって下さい。簡単な割にめっさ充実感のある化石だと思うです〜(+∀+)。恒例の冬探検ごっこ。風邪さえひかなければ良い一日でした〜(汗)。
Commented by はにわ at 2013-02-11 22:10 x
いや~~アルビアンさんの記事を見てすぐにのぞきにきましたよ。これが産地風景なんですね。標本は画像で見ることはたくさんありましたが、これが現場の臨場感いいですよ。もう興奮してしまいました
たくさん埋まってるんですね。いいなあ、なんで四国にもタカハシ様ないかなあです
Commented by もとろん at 2013-02-11 22:47 x
はにわさん、どもなのです〜(+∀+)!!!
本日はアルビアンさんとのコラボです〜。丁度ワタクシが記事を書き終え、アルビアンさんのブログがチェックしてビツクリ峠。これはっ(+∀+)!!とばかりに慌ててワタクシもアップしたのでした〜。タカハシホタテだらけの川でした。はにわさんも、是非ホッカイロ〜にいらして下さいよ〜。宿泊費だけは浮きますよん。
Commented by Macrowavecat at 2013-02-12 22:48 x
やっぱり良いですね~タカハシホタテ。参考にさせていただきます♪
Commented by motoronron at 2013-02-12 23:19
Macrowavecatさん、どもばんばんは〜(+∀+)!!!
昨日は沢山の楽しいビーチコ記事をありがとうございました。めっさ楽しませて頂きましたよん。タカハシホタテ、デカモチでいいですよね〜。なんとてっても二枚貝とは思えない重量感が良いです〜。
Commented by fossil1129 at 2013-02-13 20:15
いつのまにか
こんなにすごい巡検記をアップしていたなんて
気づかなくて不覚です。

こんな感じで採れるなら、次の夏の巡検では
ぜひとも立ち寄りたいと思いました。

殻の大きさ、右殻の膨らみ、耳の保存…どれをとっても魅力的な化石です。
Commented by もとろん at 2013-02-13 22:19 x
fossil1129さん、どんそわ〜る(+∀+)。
あれあれ、fossil1129さんは、タカハシホタテ天国を未体験だったのですね〜。超簡単に採れちゃうので、是非、今夏、お帰りの際にでもゲッチョしてくださいませ〜。イベントの時のプレゼントや景品にも良いのではないかと(笑)。