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化石のはなし

motoron.exblog.jp

北海道で化石採取をしている motoron と Ryoのブログです。

岩見沢・朝日・その2

2009年 12月上旬

前回のつづきです。

昨日は日が暮れてしまい、ちゃんと採取出来なかった「朝日の崖」に再チャレンジです。
この日は朝から寒く、昨日よりも大粒の雪が降ったりやんだりしていました。

↓この写真はちょっと拡大します。
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昨日のパノラマ写真は、この写真の右手から撮影したものです。
中央の高い崖の下が化石産地になります。

11時半、崖に到着しました。
「昨日と同じ左側の露頭から採取しましょう」
「さぁ、今日は採るぞ~!!」

崖へ近づく斜面の途中、草に埋もれ苔むした一抱えもある岩がありました。
二枚貝の断面が見えました。軽くハンマーを当てただけで、
簡単に割れ、中から無数の貝化石ボロボロと出て来ました。
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「あ〜!これって...大八木さんの本に出てくる、モディオルス・チカノウィッチーってヤツじゃないですか(+∀+;)?」
「そうだ!!コレだ!!」
「あの本には美流渡(みると)ってありましたが、案外ココで採取したのかもですね」
「すごく面白い形をした貝だね。これでも二枚貝なんだよね...」
「そうです、イガイ、つまりムール貝等の仲間だと思います。しかし、よく膨らんでいますね」
「じゃ、アタシも探してくるね」
「カシパンウニよろしくです(+∀+)」
「了解!!」
ワタクシがしゃがみ込んで、チカノウィッチーを叩き出しているうちに、
Ryoはどんどん高い所へ上がって行きました。
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チカノウィッチーは、ハンマーを振るう度に出て来ます。
殻は分厚く保存も悪くない様です。ただ数が多いのでどれを選んで良いものか分からず、
少しでも状態の良さそうなものはビニール袋に片っ端から詰めました。
袋が一杯になったところでワタクシも移動する事にしました。辺りの岩を観察しながら進みます。
落石した巨岩はガサガサした砂岩質でスパッと切れた様に美しい面を見せています。
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チカノウィッチーは至る所にある様です。殻が溶け去った二枚貝の黒い印象化石も多くあります。
岩棚の上、直径1cm程のカシパンウニが風化し砂と一緒に誰かがそこに置き忘れた様にありました。
ウニは内型や印象化石が多く、殻が残っているものは脆く、
タガネで取り出そうとすると衝撃で割れてしまうこともありました。
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やや高いところからは大小のタマガイを見つけました。
こちらも二枚貝同様、殻は完全に溶けてしまっていますが、
二枚貝が母岩と共に欠けてしまう事が多いのに比べ、分離はとても良い様です。
多少乱暴に母岩を叩いてもタマガイだけが無傷でコロンと出て来ます。
タマガイにウニ、大好きな化石を採取できて大変満足です。
崖の最上部に登りました。
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岩壁にもこれまで見て来た貝が入っています。
チカノウィッチーの群集もあり当時の海底の様子がうかがえます。
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少し視線をずらせば下界の風景が広がっています。
何千万年も経ち、宙にいて貝達は一体どんな気持ちでしょう。

また、雪が降って来ました。ワタクシは大きな岩の間に横になって一休みしました。
逆さの崖と空を見上げ、突然視界に現れる様に落ちてくる無数の雪をぼんやりと見ていました。
まるで地球に抱かれている様な心地よさです。体の上には雪がうっすらと積もりはじめます。
遥かな山はコウコウと泣き、頭を寄せる岩の冷たく埃っぽい匂いはただただ懐かしく、
このまま石に溶けてしまいたくなる安らかな気持ちです。
遠くの方でRyoが一生懸命石を叩いています。その音が崖に跳ね返りながら微かに届きます。
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どんどん雪が降って来ます。眼下の国道では車がライトを灯しました。
まっすぐな道をスピードを上げ走ります。
それがスローモーションの様に見える広くぼうっとした景色です。

下へ降り、Ryoのところへ行きました。
「Ryoさ〜ん。どうですか?」
「うん結構採ったよ。そっちは面白いモノあった?」
「ウニとタマガイと二枚貝を採りましたよ」
「ウニね、欲しいんだけど全部壊れちゃうんだよね。あとは全部二枚貝だよ」
「雪がひどくなってきたので、そろそろ退散しますか」
「待ってて、これ採ったら終わるから」
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Ryoを待つ間、まとめた袋を回収して歩きます。
「さ、行こっか」
「あっと言う間に白くなりましたね〜」
「もう何にも見えなくなったね」
「こうなると、また崖の印象が違って見えます」
「キレイだよね〜。アタシ、こ〜ゆ〜風景が一番好きだな〜」
「ワタクシもです。また来年の春に来ましょうね...」
しばらくの間、ふたりとも動かずに、じっと辺りを眺めていました。

数m先も見えない大粒の雪の中を帰ってきました。
アツアツ具沢山の豚汁を食べ、心まで温まってから洗浄作業です。
「こうして並べてみると、結構採ったね〜」
「だって、いくらでも出てくるんですもの...(+∀+;)」
「しかし面白い形してんな〜」
「長さの割に膨らみが大きいんですよね」
「一番大きいので8cmちょっとか〜」
「ン?なんだか、殻の破片が多い様な...」
「あ、殻、取れちゃった....」
「あちゃ〜、案外モロいのかも(+∀+;)」
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チカノウィッチーは殻が厚く、一見丈夫そうですが剥離し易い様です。
水洗の際も注意して洗わないと、殻の裏側や隙間へ入った水が悪さをし、
パラパラと殻が流れ落ちる事があり、最悪、内型だけになってしまいます。
この経験から今では、少し湿らしてからブラシや針等で丁寧に汚れを落とし、
素早く水洗の後タオルで拭い、すぐに薄いボンド水に浸けます。
化石や中の泥や石が少しでも乾燥している方が吸水が良いからです。
しっかりと乾燥させてから、今度は、やや濃いめのボンド水に浸けコーティングは完成です。
採取後、自然乾燥させると壊れ易くなるので、コーティングは早めに施すのが良いと思います。
朝日の崖で最も多産しますが、良品を得るのは大変難しい化石です。
完品は何十個にひとつ位かもしれません。
しかし、奇異とも言える独特なフォルムは素晴らしく、大好きな化石です。

夜、Ryoは寝付けない様で、いつまでもゴソゴソしています。
「Ryoさん、どうしました?」
「なんかさ〜、こうやって目をつぶると...雪の崖が見えるんだよね」
「あ、ワタクシもです。すごく綺麗でしたね」
「今頃は、もう真っ白かな...。」
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by motoronron | 2013-02-14 18:20 | 岩見沢 | Comments(10)
Commented by アルビアン at 2013-02-14 20:51 x
こんばんは(^○^)もとろんさん(^○^)ありがとうございます。全体が見えました~、私も同じ壁面をアタックしました~ 雪降る、寂しげな場所、山の上から見下ろす場所は、近代化の景色、目の前は、太古の風景、異次元な空間を拝める、素晴らしい産地、チカノさん、やはり、大量採集、私も同じです。大八木さんにも、当時、送りました、もしかしたら、送ったら化石をみてアタックし、後に本に掲載されたかもです。 懐かし思い出深い産地です。(^○^)
Commented by もとろん at 2013-02-14 21:28 x
アルビアンさん、ど〜もなのです〜(+∀+)!!
やっぱしココでイイのですね〜。アルビアンさんが採取する所に悪いトコ無し...。ここの景色はステキですよね。ワタクシたち荒涼とした感じのトコが好きなので大変気に入っておりまする。なんと大八木さんにお送りしましたか(笑)まさか掲載された化石がアルビアンさんのではないですよね〜(+∀+;)??あの様な楽しい本がもっとイッパイ出てくれるとウレシイのですが...。日本は国土の割にめっさ化石産地多いのに情報が少なすぎます〜(涙)。
Commented by P at 2013-02-14 21:59 x
長くだらだら書いてある文章はいつもほとんど読まないんだけど、もとろんさんのは
読んじゃうんですよ。才能あるんじゃないですか?自分は才能がないので、ブログの
文章は親分まかせです。
Commented by Macrowavecat at 2013-02-14 22:38 x
あぁ、この雰囲気すごく良いですね~。冬のピリッとした空気とか、崖での一瞬時が止まったような感じとか、帰ってきた後のなんだか暖かい感じとか。誰か前に言っていたような気がしますが、本にして欲しいくらいです。
Commented by fossil1129 at 2013-02-14 23:14
いやぁ~、
私もPさんと同じです。

文章が美しい。画像が美しい。
長い文章なのについつい読み入ってしまいます。

あ、ryoさんも美しい!
Commented by apogon2 at 2013-02-15 00:22 x
その1、その2と完読しました^^。

本当に真冬の巡検、お疲れ様でした。
それにしてもこんなに貝化石が出る所があるんですね。恥ずかしながらチカノウィッチーは初聞きです。
アンモ以外にももう少し化石に貪欲にならなければいけないですね。
雪がしんしんと降る冬の崖の風景、静けさが伝わってきました。
Commented by もとろん at 2013-02-15 11:09 x
Pさん、まいどおありがとうございます〜(+∀+)!!
とうとう「長くだらだら書いてんじゃね〜っ(怒)!!!!」って言われてしまったかと思い、小心者のワタクシ、ゴイス血圧と脈拍がUPしてしまいました...(+∀+;)はぁはぁ...。皆様の様にスッキリ表現出来ると良いのですが、逆にアレコレ考えて時間がかかってしまいます(+∀+;)。ワタクシはきっとブログ向きじゃないんだよな〜...と、何度かやめようかと思いましたが、皆様からの温かいコメントを頂戴し、なんとか続けております。
Commented by もとろん at 2013-02-15 11:21 x
Macrowavecatさん、どぅもようございます〜(+∀+)!!
もにょもにょした文章から、雰囲気等汲み取って頂きおありがとうございます〜(涙)望来にしても冬の崖ってイイですよね〜。いつも心が澄み渡って....じーっとしていると心が空っぽになる様な気がします。ワタクシは暑いの超ニガテなので冬限定〜(+∀+)。
Commented by もとろん at 2013-02-15 11:35 x
fossil1129さん、どもにちは〜(+∀+)!!
お褒めに預かり光栄まろなのです。先にも書きましたが、シュッとキレのある文章が書けないので、いつもダラ〜ンとしてしまいます。せっかちな性格なのですが〜(+∀+;)??朝日の崖は残念ながら白亜紀ではありませんが、いつか万字等で採取することがありましたら道沿いですぐに採取出来ますので、チョイ寄りしてみて下さいね〜。最近は、お仕事お忙しい感じですか?お体大切になさって下さいませ〜。
Commented by もとろん at 2013-02-15 11:45 x
apogon2さん、どっもで〜す(+∀+)!!
深夜、お疲れのところ、全部読んで下さったのですね。おありがとうございます〜。ワタクシたちは化石博愛主義者なので(つまり何でもイイ)何処でも出没しております〜(+∀+;)アルビアンさんの様に地域も時代も知識も広範囲というのが理想と思うのですが...病的な程記憶するのがニガテなワタクシ、も〜何が何やら(+∀+;)ほわっ〜!!???です。Ryoさんは端からそんな事気にしてないですし〜(汗)。
雪崖めっさLOVEです〜。